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地域のイマ、とコレカラ…『第十二回 俣野別邸庭園 園長 栗林恵美さん』

新型コロナウィルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第12回目は俣野別邸庭園(http://www.hama-midorinokyokai.or.jp/park/matanobettei/)栗林恵美(くりばやし えみ)さんです。横浜市戸塚区と藤沢市の境に位置する『俣野別邸庭園』。歴史のある邸宅と、四季折々の花木や草花を織り交ぜた景観は我々に癒しを与えてくれています。園長の栗林さんに庭園の魅力やコロナによる変化、現在のお気持ちをインタビューしました。

 

―まずは俣野別邸庭園について教えてください。

栗林 恵美(以下、略):俣野別邸庭園は横浜市と藤沢市の市境に位置している、河岸段丘の高低差のある地形が特徴的な風致公園です。庭園からは富士山や丹沢山系を望むことができ、四季折々の変化に富んだ草花が作る庭園内の風景は、心落ち着く静かな空間になっています。

庭園は、芝生広場を中心とした外苑と俣野別邸が建つ内苑の2つのエリアで構成されていまして、広さは約5.8ヘクタールと東京ドームより1回り広い大きさです。内苑にあります俣野別邸は、昭和14年に建築家の佐藤秀三によって設計施工された和洋折衷住宅です。平成16年に国の重要文化財に指定されましたが、平成21年の保存修理工事中に火災が発生し、南棟と主屋棟などの主要部分は焼失してしまいました。横浜市が平成26年から再建工事を進めまして、エレベーターなど一部付け加えた部分はあるものの、主な部屋のつくりや仕上げはオリジナルが忠実に再現されています。意匠的にも優れた住宅建築でして、当時の郊外住宅の在りようを物語る歴史的価値の高い建造物として平成29年横浜市認定歴史的建造物に指定されました。

平成29年4月から内苑の俣野別邸が開館し、令和3年4月で5年目を迎えます。開館した年より、年間を通して四季折々のイベントを開催してご来園の皆様に楽しんでいただいています。リビングではコンサートを開催したり、庭園では庭園散歩やクラフト講座を行ったりと、別邸ならではの良さを活かして運営しています。

 

 

●俣野別邸庭園(〒245-0065 横浜市戸塚区東俣野町80-1)

 

 

●入口に入ると豊かな木の香りが香る。

―コロナ禍をどのように過ごされていましたか?

2020年2月29日から5月31日まで俣野別邸は閉館していました。その間は、再開の時にお客様に配るプレゼントとして、タチツボスミレやシバザクラなど、閉館している間に咲いていたお花で、栞やコースターを作っていました。それぞれ100個ずつくらい作り、再開時にご来館されたお客様にお配りしました。

他には、閉館している間は除草や庭の手入れを皆でしていました。イベントに関しては、毎年開催してきた4月の「つつじ祭り」と6月の「あじさい祭り」は中止になってしまいましたが、8月の「夏祭り」は開催できました。本来ですとクラフト講座を行うんですが、その時は庭園で採れたシダーローズ(ヒマラヤスギの球果で松ぼっくりのような形)やセンニチコウなどのドライフラワーをポートレートにする工作キットを販売いたしました。その頃はステイホームと積極的に言われていた時期だったので、お家でできるキットは喜ばれました。これは20セット用意し、大変好評でした。12月の「もみじ祭り」でもクリスマスのテーブルアレンジのキットを作りましたが、こちらも販売してまもなく完売しました。

  

 

●プレゼントで配布された栞とコースター

―来園されるお客様の様子はいかがでしょうか?

第一波の時は庭園の方は通常通り開園しており、ちょうど桜も見ごろだったこともあって、比較的お散歩で来られる方が多かったと思います。開園しているかとの問合せも多かったですが、コロナ禍中でも皆様に楽しくご来園いただけました。現在でもマスク着用や3密を避けるなどの注意喚起を行っていますので、お客様にも安心して来園いただいています。 最近では自粛生活も長引いており、マイクロツーリズム的に近所の公園に遊びに行こうという方が多いようです。2021年2月4日のタウンニュースの記事に、園内に咲いたソシンロウバイの写真が載った時は、かなり大きく載せていただいたため、その日からソシンロウバイを観に多くのお客様がいらっしゃいました。本当にタウンニュースの影響力を実感しました。

―栗林さんがコロナ禍で一番辛かったことはなんでしょうか?

人数制限ですね。現在の定員は横浜市の通知で、その部屋の平米数によって算出しています。コンサートなどを行っているリビングは15名まで……というようにですね。リビングでは、2021年2月20日(土)の「早春のリビングコンサート」に出演していただいたライトハウス・アンサンブルを始め、色々な方のコンサートを開催しております。本来であれば多くの方に参加していただきたいのですが、密を回避する為に人数制限をしています。

その他、今までは館内をお客様にご案内していたのですが、3密を回避する為に、ガイドは現在休止しています。この2点が辛いことではありましたが、新型コロナウイルス感染症拡大防止の為、遵守していかなければならないことと思っております。

 

 

 

●2021年2月20日(土)の「早春のリビングコンサート」にて司会をされる栗林さん

―「早春のリビングコンサート」拝見いたしましたが、とてもステキなコンサートでした。

ありがとうございます。リビングコンサートは賑やかなコンサートではなく、基本的には静かな、耳に覚えのあるようなクラシックやポップスの演奏を中心にしています。もし、コロナが終息してマスクもしない時代がやってきたら、歌声喫茶とまでは言わないけれど、皆様で歌うイベントはありかもしれません。お客様の思い出のある曲を聴くと心が落ち着きますし、ほのぼのとした気持ちを大切にしていきたいです。ここにいるとホッとするね、という場所を作るのが私の想いです。

―コロナの終息後に始めたい活動はありますか?

コンサートの定員を30名に戻したいのもそうですし、クラフト教室など、参加を募って行うイベントを実施したいです。また、キットの第3弾的なところで、庭園で採れたドライフラワーをポートレートに飾った、オリジナルのポートレートセットを作ろうと思っています。このように、庭園の中にある植物を用いたイベントは行いたいです。実は、館内の花装飾はほとんど庭園の植物です。庭園の中にある草花で生け花・フラワーアレンジメントをしています。また、館内に花を飾っておくことで、お客様から「このお花どこにあるの?」と質問を受ければ、スタッフとお客様の間のコミュニケーションツールになるんです。買ってきたもので活けるのではなく、ここにある花でおもてなしをすることは大切なことだと思っています。

 

 

 ●館内を彩る生け花

―最後に、さくらプラザに期待されることを教えてください。

HPなどを拝見しまして、クラシックなど上質な音楽を身近に体験できる施設だなって思っていました。これはどこの施設でもおなじだと思いますが、コロナが収束したら精力的に活動してもらいたいです。特に、戸塚区に特化した演奏家などのコンサートや演劇などはいかがでしょうか。それから、もうやってらっしゃると思いますが、アマチュアの方々の発表の場を用意できると良いなと思います。

 

※掲載内容は2021年2月末のインタビュー時のものです。

(取材・文:小野 良)

戸塚区民文化センター さくらプラザ