地域のイマ、とコレカラ…『第十六回 横浜市戸塚区社会福祉協議会 事務局長 安部力さん』
新型コロナウィルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第16回目は横浜市戸塚区社会福祉協議会( http://totsukashakyo.com/)安部 力(あべ ちから)さんです。戸塚区の地域福祉拠点としての役割、福祉保健活動の拠点「フレンズ戸塚」の運営が、コロナ禍によってどのような変化があったのか取材をしました。
※本インタビューでは「横浜市社会福祉協議会」のことを「市社協」と、「戸塚区社会福祉協議会」のことを「区社協」と、戸塚区18地区連合町内会エリアに組織されている「地区社会福祉協議会」のことを「地区社協」と省略しております。
―安部局長が戸塚区社協に着任されたのは、新型コロナウィルスの影響が始まる直前と聞きました。
安部 力(以下、略):そうなんです。2020年の4月に保土ケ谷区社協から戸塚区社協に異動をいたしました。その当時、既に新型コロナウィルス感染症がまん延しており、着任して間もなく緊急事態宣言が発令されました。このことにより外出することもできなくなってしまい、地域の方とも直接お会いするタイミングが持てませんでした。6月になってからようやく区の連合町内会自治会の会長会に参加することもでき、ごあいさつすることもできました。地域の活動も、昨年はほぼ全て中止という状況でしたので、今年になって、少しずつ活動再開の兆しが見え始めた状況です。
●横浜市戸塚区社会福祉協議会 フレンズ戸塚 外観(〒244−0003 横浜市戸塚区戸塚町167-25)
―着任されてからすぐ感染症の対応を求められたのは本当に大変だったと思います。社協はコロナ禍でどのような変化がありましたか?普段の取り組みも合わせて教えてください。
区社協では地区社協等の地域活動を支援する取組や、地域住民の個々の支援に係る個別支援サービスなど、幅広い活動や事業を運営しています。(※写真参照)例えば、次世代の福祉を担う、小中学校の児童生徒に対する“福祉教育”や、高齢や障害などにより外出が困難な方に対して、付き添いをしてくださるガイドボランティアさんやガイドヘルパーさんに繋ぐ“移動情報センター事業”などです。また、国として進めている地域包括ケアシステムの構築を目指すための”生活支援体制整備事業”という、住民の皆様や区役所や地域ケアプラザの皆様と共に進める地域支援事業も行っています。高齢者が継続的にその人らしく安心して生活できる地域作りを進めるために、生活支援コーディネーターが区社協と地域ケアプラザに1名ずつ配置されています。区社協は、市からの情報などを各地域ケアプラザのコーディネーターに伝えるなどといった、市との間に入っているような位置づけがありますね。
※区社協の他の取り組みはパンフレットに掲載されている他、ホームページから閲覧できます。(http://www.totsukashakyo.com/work/)
●戸塚小学校から送られたお礼のメッセージ。福祉教育の一環で協力をした。
コロナ禍で特に変化が起きた事業は”生活福祉資金の特例貸付”です。この貸付は、新型コロナウィルス感染症の影響により失業や業務縮小のため経済的な影響を受けた方々に対して、生活費等の貸付を行う事業で、県社協が貸付元となり区社協が相談や申請受付の窓口を担っており、昨年3月から始まりました。コロナ禍に入ってからは問い合わせが多くあり、担当以外の職員も協力して区社協全体で対応してきました。申請受付した件数として戸塚区内だけでも、昨年度1年間で1800件程度、毎月100件以上の受付をしておりました。現在、令和3年8月末をもって受付を終了する予定ですが、いまだに毎月、問い合わせや申請が続いていますので、まだまだ経済状況の改善に至っていない方が多くいらっしゃることを実感します。
―生活支援コーディネーターはどのようなお仕事をされているのですか?
第一に大切なのは、地域住民の方との関係作りですね。今地域にとって何が必要なのか、地域の皆様と一緒に考え話し合い、課題を共有しながら必要な活動を生み出すことで、地域の高齢者が安全に安心して暮らせる地域づくりを進めています。
―区民の福祉保健活動団体さんの拠点として「フレンズ戸塚」の運営もされておられますが、そちらはいかがでしたか?
フレンズ戸塚は去年4〜5月の緊急事態宣言の期間中は全てクローズしまして、その後、昨年7月より貸館利用を再開しましたが、行政の指示により衛生管理や利用人数・利用時間等について制限をかけながらご利用いただいています。現在では、間隔を保ちながらの利用になりますので定員の70%でのご利用をお願いして、20時までの利用となっております。
●フレンズ戸塚の施設、対面朗読室と録音室。目の不自由な方へボランティアが本を朗読したり、本の内容をテープやCDに録音して必要な人に郵送したりといった利用も可能。
―戸塚区で福祉保健活動をされておられる方の様子はいかがですか?
去年の春先はほとんど地域の活動自体がストップしていましたね。工夫をしながら活動再開したところもありましたが、それは本当に一握りの団体さんで、去年1年間はほぼ止まっていたと思います。また、団体メンバーの高齢化により、今後の活動は無理だと判断される団体さんもいくつかありました。市社協では「ボランティア活動は私たちのまちの宝物」という冊子を制作して、コロナ禍で必要とされる感染症対策の情報や注意事項に加えて、「皆様の活動は地域にとってとても大事なことなんですよ」というメッセージを発信いたしました。他にも、活動を休止しているボランティアが今どんな想いなのかという声を集めて「とつかボランティアセンター通信」の記事に掲載しました。(http://www.totsukashakyo.com/upload/totsukanews/file230_2.pdf)対面で話し合いを持つことも難しい状況のため、様々なボランティアさんの思いを共有できるツールとして、情報をお渡しすることで活動を続けようと思える団体さんがいらっしゃればと思っています。
●「ボランティア活動は私たちのまちの宝物」
―社協で今後始めたいことはありますか?
戸塚区には18の地区社協がありますが、自治会町内会のような更に細分化されたエリアで集いの場やサロンを作ることや、他にも生活支援のボランティア活動を自治会エリアの中でできたら、もっと身近に助け合えるのではないかなと思います。昔は「誰々ちゃんは最近どうだ」とか、子供が友だちの家に遊びに行ってお母さんがいなければ「一緒にご飯を食べて行きなよ」と声をかけるだとか、自然と見守りができるネットワークがありました。
近年の集合住宅やマンションではセキュリティも厳重になっているので、隣同士でどういう人が住んでいるか知らない場合もありますよね。今後の社会を考えていくと、少子高齢化や人口減少などの状況は進行していきます。現在でも地域の課題を行政(公助)でカバーすることは難しくなっています。自分(自助)だけではどうにもならないことは、地域の支え合い(共助)が必要になります。先ほどお話しました”生活支援体制整備事業”もそのような必要性から整えられたんです。民間サービスでも賄いきれない、行政でも賄いきれない、制度からこぼれてしまう方を、地域の力もお借りしながら自立した生活を送っていただけるように地域作りを進めています。
―今後の我々のような施設同士も情報交換を行い、区民の方々の活動を支えることは大事だなと思いますが、さくらプラザや他の施設との協働はどのように思われますか?
区社協は地区社協の活動を支援しながら地域づくりを進めています。地区社協は地域住民によって組織されており、様々な関係者のネットワーク組織として、人的な交流を作ることも使命の一つです。それぞれのエリアに、さくらプラザだったら芸術で地域の文化・芸術イベントの中で繋げていくとか、スポーツセンターであれば健康の指導員の方を繋げていくとか、そんなイメージができるかと思います。地域ケアプラザは地域の最も近い住民の相談窓口となっており、地域とのパイプ役として非常に頑張っておられます。区内全体の活動を再スタートさせるために、区社協として持っている情報やノウハウを提供していきたいです。
※掲載内容は2021年6月末のインタビュー時のものです。
(取材・文:小野 良、写真:石井 由里子)