地域のイマ、とコレカラ…『第一回 森 祐美子さん』
新型コロナウィルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第一回目は認定特定非営利活動法人こまちぷらす(以下こまちぷらす)の森祐美子さんにオンラインにてインタビューを行いました。多方面に活動を拡げる森さん。今回はコロナによって起きた意外な変化や、森さんの考える街づくりに関してお話を伺いました。
認定特定非営利活動法人こまちぷらす 代表 森 祐美子さん
―こまちぷらすの活動について教えてください。
森祐美子(以降、森):こまちぷらすは2012年2月に立ち上がりました。大きな事業としては、こまちカフェを運営しています。『子育てをまちでプラスに』の合い言葉のもと、子育てを街全体で行えるような社会を目指して活動をしています。
●こまちカフェ 戸塚駅から歩いて7分の距離にあるコミュニティカフェ。季節の食材を使ったランチやこだわりのスイーツを楽しめる。イベントスペースも使用でき、子育てに関する様々な活動が行われている。
―子育てを街全体で行うとはどういうことでしょうか?
森:もともと法人設立のきっかけが、私自身の初産の時に子育てで孤立感を感じたことが原点でした。ですので、そのような孤立感を解消できるような仕組みをこまちぷらすで作っていければと考えています。具体的には“対話の場”と“出番の場”の二つを作ることです。 “対話の場”を作ることで繋がりを持ちづらい子育て中の人たちが他人と対話するきっかけを用意する。また、子育て中は自分自身のことが後回しになり、自分にとって大事なものがわからなくなってしまいがちなので、自分自身と対話するきっかけという意味でも“対話の場”は重要です。“出番の場”は、人は社会で「役割がある」と感じられると結構力が湧いてきます。私自身もそうやって助けられてきたので、そういった活躍の機会を作っていくことで孤立感の解消に繋いでいきたいです。
●こまちカフェのお弁当。 戸塚で採れた旬の野菜を中心に使用している。コロナによる自粛期間も販売していた。 ※2020年5月までのメニュー。内容は季節によって変更になります。
―コロナの影響で“関わり方”にどういう変化が起きましたか?
森:関わるという点では、近所の皆さんとの関わりが不思議とすごく増えました。こまちカフェはコロナの影響で(雑貨の販売とか弁当の販売は継続していましたが)店内では何もできませんでした。しかし、外でマスクを販売したり、お花や雑貨を売ったりすることで、道行く人とお話しするきっかけが生まれました。他にも、お弁当をご近所のご高齢の方にお届けすると「ありがとう」と言ってまた何か買いに来てくれたり、「この前のお弁当のところね」といったコミュニケーションができたりしました。 こまちカフェにはどうしても「あそこは子どもたちが集まる場だろう」というイメージがあり、これまでは子育てに関わりがない人は足が運びにくいといわれることが多かったですが、こういったところで新しい関係性が生まれたと思います。
●5月時点でのこまちカフェの様子。密を避けるため来店を各時間帯に1組に限っていた。
●レジはビニールシートで感染対策をしている。
―アフターコロナに向けた活動も企画されてらっしゃいますね。
森:スタッフがどんどん企画をしてくれています。今どういう人たちが一番孤立しがちかということに対して、スタッフがそれぞれ色々な経験をしてきているのでアンテナが立つんです。だから、コロナが拡大し始めたときは「事業性とかお金とかは後でいいから、とりあえず必要な人に向けて何かやろう」というメッセージをスタッフに出して、それぞれが必要なものに向けて動き始めました。時間をかけて計画を立ててはいられなかったので、とにかくスピーディーに形にするということを優先してやりました。 2年後3年後どういうふうに一つ一つの活動を続けられるかというのは正直私もわからないですが、まずは目の前のニーズをもとに短期間で形にすることを重視した感じですね。
●Zoomで開かれたイベントの様子。
―最後に今後どう戸塚を盛り上げていきたいかという点をお聞かせください。
森:戸塚全体を考えるというのは、なかなか難しいことだと思うんですよね。それぐらいに戸塚って大きい単位なんです。そう考えたとき、地域の中に自分が安心して過ごせる小さなコミュニティだったりとか、自分の居場所だと感じられる人たちとの場であったりを、一人一人が持っておけるようにしていくことが重要ではないでしょうか。 しんどい時にはそこに寄りかかったり、何か面白いことを仕掛けたいと思ったときにはそこを頼れたりできる場所が、地域中に点在していると良いなと思うんです。なおかつ、その場所がお互い閉じ込もるのではなく、隣のコミュニティにもちゃんと関心を持って交差できると良いですね。関心のないものを持っている人たち同士が、お互いについて積極的に関心を持つことはなかなか難しいです。例えば、私がスポーツに全然関心がないとして、スポーツコミュニティの人たちと話すには、気後れしてしまったり、入っていけないかなと感じるかもしれません。他にも、年齢や障害、病気、介護中だったり、子育て中だったり、様々な立場の人がいると思うのですが、いい具合にミックスされる場を同時に作ってかなきゃいけないと思っています。 その点では、美術とか音楽とかの芸術は言葉にならないものを表現したり、受け取れたりできるので、異分野が繋がる力はそういうところで作り出せるものではないでしょうか。こういうコミュニティを交差させる機能は、さくらプラザにもあるかもしれないですね。 (取材・文:小野 良) 取材日:2020年5月26日