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地域のイマ、とコレカラ…『第十七回 株式会社コナカ 取締役 土屋 繁之さん』

新型コロナウイルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第17回目は株式会社コナカ 取締役 専務執行役員CFO※ 管理本部長 土屋 繁之さんにインタビューを行いました。皆様ご存知、東戸塚に総本店が建つ「紳士服のコナカ」。コロナ禍における苦労と、これまでの店舗販売から新たなインターネット販売へ展開、変わらない接客の大切さなどをお話しいただきました。

※CFO:Chief Financial Officer 最高財務責任者

株式会社コナカの歴史を教えてください。

土屋 繁之取締役(以下、略):当社は1952年神戸で創業しました。当時のスーツは1着が給料1か月分という大変高価なものでした。

当初は官公庁にこちらから伺って昼休みに採寸するなどして、給与天引きでスーツをお渡しする職域訪問販売という形をとっていました。その事業が軌道に乗り、1960年から日本テーラー株式会社として北海道から鹿児島まで支店を増やし、従業員が1300名くらいの大きな会社になりました。

1970年代になると高価だったスーツもビジネス着として普及してきたため、より多くの人に提供できる店舗を作ろうという動きが出てきました。1973年に「新しい紳士服のお店を作ろう」という意味で株式会社 新紳という子会社の1号店を伊勢佐木町に構えました。同年に戸塚の旭町商店街にも店舗を構えました。おかげさまで戸塚店は地域のお客様にご愛顧いただき、一気に多店舗化に踏み出すきっかけとなりました。

時代に合った新紳が店舗を増やす中で、親会社である職域訪問販売の日本テーラーは少しずつ縮小して店舗業態へ切り替えていきました。

1981年には「紳士服コナカ」に屋号を変えた1号店を戸塚の国道1号線沿いに構えました。そういった経緯もあって本社を移転するなら戸塚がいいという想いがあり、1991年に念願かなって伊勢佐木町から東戸塚に株式会社コナカ本社を移転することができました。

株式会社コナカの主な企業活動を教えてください。

株式会社コナカはビジネス衣料の製造・販売がメインです。郊外型の大型店舗である「紳士服コナカ」に加えて、若い方をターゲットに駅ビルなどに展開しているシンプルな価格設定の「スーツセレクト」、テイラーによる採寸と細かなカスタマイズが可能なオーダー業態の「ディファレンス」の3つの柱があります。

郊外型の「紳士服コナカ」は現在250店舗で、東北、関東、九州に展開しています。「スーツセレクト」は現在200店舗まで増え、北海道から沖縄まで幅広く展開しています。「ディファレンス」はより細かなオーダーを求める時代に合っていることもあり、一気に50店舗まで増えました。

グループ企業にはサマンサタバサブランドのバッグ、ジュエリーの製造販売を行っている株式会社サマンサタバサジャパンリミテッドがあります。他にも洋服のリユース・リフォーム事業を行う株式会社アイステッチや、フランチャイズ事業を積極的に進めて地域に貢献するコナカエンタープライズ株式会社があります。コナカエンタープライズ株式会社では学童保育と英会話の「KidsDuo」や、「とんかつ専門店 かつや」、「からあげ専門店 からやま」など飲食店のフランチャイズ経営も行っています。

 

メインであるビジネス衣料の分野においては、大型店舗「紳士服コナカ」だけではお客様のニーズに柔軟に対応することが難しいこともあり、早くから「スーツセレクト」や「ディファレンス」の前身である「OSV」というブランドを立ち上げ、 色々と試験運用をしてノウハウを蓄積しました。オーダースーツ市場が成熟するタイミングに合わせて、そのノウハウを「ディファレンス」1号店に注ぎ込むことで新しい業態を作り上げ、短期で店舗拡大することができました。「紳士服コナカ」のベテラン店長をトップに据えるなど、お客様にとっても安心感を持っていただけるお店となりました。

スーツセレクト」、「ディファレンス」ともにクリエイティブデザイナーの佐藤可士和さんとコラボしてコンセプトづくりやブランディングを進められたことも大きかったと思っています。

新型コロナウイルスの影響でどのように日常が変化しましたか?

コロナの影響で、これまで展開をすすめてきたショッピングセンターや地下街、駅ビルなどの店舗が緊急事態宣言によって休業に追い込まれました。

特に去年の1回目の緊急事態宣言では日本中の人が警戒して、人出がなくなるとともにお店も休業となり、その1か月間はほとんど売り上げが無く、大変な影響が出ました。

流通においてもコロナの影響がありました。当社の海外の主力生産拠点はインドです。バンガロールというところにある大手の企業に当社の国内工場の技術指導員を派遣して、国内工場と同じ基準の管理体制を作っています。しかし、インドにおけるコロナの急激な感染拡大と、それに伴うロックダウンの影響で、洋服の出荷が予定通りに進んでいません。

ミャンマーも大きな海外生産拠点ですが、こちらはクーデターがあった関係で製品を出荷できない状況が続きました。致命的な遅れにはなっていませんが、商品の到着が遅れたり、お客様にお届けしたい時期に商品がなかったりといった影響は出ました。現在でもコロナの影響で今後の販売予測が難しく、発注量を絞るなど細かなコントロールをしています。仮に、コロナが終息しても時短営業などがあるかも知れませんし、まだまだ気を緩められない状況が続きそうです。

新型コロナウイルス終息後に始めたい活動はありますか?

今後もビジネス衣料についてはしっかりと良いものをお客様にお届けしながら、アフターコロナの新たなニーズに対応していきたいと考えています。

昨今では「オーダースーツ」というものに対する消費者の方の認識も大きく変わってきています。

スーツセレクト」では昨年9月から「AIスピードオーダー」というサービスを始めました。このサービスは、基本項目を入力し、スマートフォンで写真を4枚撮影するだけで精度の高い採寸が10分で完了し、10種類の生地と型紙を選んで注文すると10日後には製品をお客様にお渡しすることができるというものです。

生地や型紙、価格にも自信があります。伸縮性がいい生地や洗える生地も選べ、型紙は人気のクラシコテーパード(写真参照)なども選べ、これで既製品と同じ28,000円(税抜)という設定です。当社のオーダーは短納期が強みで、国内工場による生産体制を持っているからこそ提供できるサービスです。通常、製造するメーカーが異なる場合、同じブランド、同じサイズを注文したのに着心地が異なるということがありますが、当社では国内、海外どちらもコナカの自社の型紙を共有して作るので着心地の差がおきません。その点においても安心してご購入いただけます。

ディファレンス」ではより細かなカスタムオーダーに対応できます。アプリでの画像採寸以外にも、店舗で専門のテイラーが細かく採寸することもできます。店舗でテイラーと生地選択をできるのはもちろん、採寸したデータはお客様のアプリに落とし込むことができるので、採寸後は自宅でゆっくり生地を見たり、もう少し袖が長いほうがいいなと思ったら袖の画像の部分を1cm伸ばしたりしてWEBから注文することもできます。

コロナ禍における新しい接客スタイルの「ディファレンス」という業態はこの1年で非常に伸びています。

画像での採寸技術があれば女性が仕事着を作る際も、知らない人に触られて採寸するよりも安心してストレスなくお作りいただけると思います。アフターコロナに向けては、ここをしっかり伸ばしていきたいところですね。

 

 

 ●クラシコテーパード 細身でスタイリッシュなスーツが若い世代に人気

 

地域への貢献もしっかりと根付かせていきたいです。

アフターコロナを見据えるとインターネットでのサービスは増えますが、お店における接客はこれまで通りこだわっていきたいです。商品に触っていただくとか、スタッフによるコーディネートや、試着した時に細かな皺の出方などを見てそれに適したブランドをお勧めするなど、他愛もない世間話も含め、そういったコミュニケーションこそがお店に来て良かったなと感じていただける大きな要因ですからね。

 

また、実は今でも、この東戸塚本社の会議室を地域の要望に応えてチアダンスのスクールに貸し出しをしています。子どもたちがダンスをしている間、ご両親の方々はロビーでのんびりされています。戸塚区役所の方に会議室を使っていただいたこともありますし、この社屋は災害時の帰宅困難者受け入れ施設でもあります。今後も地域に貢献できることを模索していきたいですね。

さくらプラザに求めるものは何でしょうか?

当社は東戸塚においては近隣の企業様との繋がりも深く、色々な情報交換も盛んに行っています。今後はこういった横のつながりをより広い範囲に進められるよう一緒に協力していけると良いですね。

また、既に本社をダンス活動に利用していただいていることもありますので、また違った形で地域に文化芸術で貢献できることがありましたら是非お声がけください。

 

(取材・文:勝間田 努、写真:小野 良)

取材日:2021年6月

※掲載内容は2021年6月インタビュー時のものです。

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