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地域のイマ、とコレカラ…『第二回 大倉陶園 鈴木 好幸さん』

新型コロナウィルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第2回目は株式会社大倉陶園 代表取締役社長の鈴木 好幸さんにインタビューを行いました。世界的にも有名な食器を製造する大倉陶園の鈴木社長。今回はコロナによって起きた変化や、鈴木社長の考える会社・戸塚の今後についてお話を伺いました。

株式会社大倉陶園 代表取締役社長 鈴木好幸さん

―大倉陶園の歴史を教えて下さい。

鈴木 好幸社長(以下、略):はじめは陶磁器製造業ではなく、日本橋で書店・洋紙店を営んでいました。創業者 大倉孫兵衛が横浜に錦絵を売りに来ていた際、現在の森村商事株式会社の創業者の森村市左衛門と出会い、輸出業に対する市左衛門の姿勢に感銘し森村組に参画、そこから物作りに入っていくことになります。大倉孫兵衛は大倉陶園の設立に先立ち、日本陶器合名会社(ノリタケカンパニーリミテド)、東洋陶器(TOTO)日本ガイシを創立いたしました。これら企業の初代の代表は孫兵衛の息子 和親が就任しました。しかし、製陶業において、これら企業の成功をおさめたことに対して満足することはなく、更に高い品質、美術陶磁器への夢を見るようになりました。その夢を実現するために、今まで行ってきた事業とは異なり、個人事業として起こす決意をし、1919年5月15日東京蒲田に大倉陶園を創設することに至りました。大倉父子の目はあくまでも国内に向けられており、時代とともに洋食器が日本人の暮らしの中に浸透していくことを見据えていました。国内で評価が得られれば海外でも自ずと認められるという自信に裏付けられたものがあったと言えます。そして、昭和35年現在の地、戸塚に工場を移転しました。戸塚の地を選んだきっかけは、そのころ戸塚は新興工業地帯として発展している時期でもあり弊社もその中、この戸塚の地を選んだものと思われます。

昨年、大倉陶園は100周年を迎え、1年間をかけ美術館での展覧会を開催させていただきました。展示された作品群は今見ても新鮮であり、実に色々な事に取り組んでいたことを改めて知る機会になりました。今あっても十分に新鮮な作品があったり、今ならここまで手間のかかったものは出来ないのではないか?というような作品もたくさんありました。改めて自分たちがもっとしっかりしなければいけないな、と思ったところはあります(笑)。

―大倉陶園の企業活動を教えて下さい。

ベースは食器、インテリア関係製造販売です。最近では、フューネラル(葬儀)に関連する製品も始めています。 また以前から法人関係の記念品や、ホテル・レストラン等のオリジナル製品は作っておりましたが、最近では個人のお客様のご要望にお応えしてオリジナル品を製作するといったお話も増えてきております。 大倉陶園は小さな会社です。製造するにあたってのすべての工程がここにあり、非常に小回りのきく利点をいかし、お客様の要望に色々とお応えすることができる会社だと思います。 また、創業当初からほとんど変わることなく引き継いできている大倉陶園の白生地は、私どもの一番の特徴だと思います。これは世界中どこを探してもない素材だと思っています。これを活かした色々なモノづくりを更に展開していければ良いと思っています。

―新型コロナウイルスで困ったことはなんでしょう?

まず最初に直営店(帝国ホテル店、軽井沢店)や百貨店の売り場がクローズになり、店頭での販売が出来なくなりました。商品の動きも少なくなったため、工場でも短期間ではありますが休業する形をとりました。また、営業活動も積極的に動くことができず、在宅勤務する体制も短期間でありますが実施しました。また、コロナによる自粛が解除されたのちの活動をどのようにしていこうかとか、今できるところの取り組みを検討、自粛解除後の活動再開時に遅れをとらないように対策を練っていました。

一番困ったのは売上の減少です。私どもはご依頼を受けてからお納めするまでに比較的時間がかかるものが多く、コロナによる自粛期間に入ったからといって、すぐに売り上げが無くなり、注文が無くなったわけではありませんが、4月、5月の売上は半減しました。6月になって少しずつ動きはじめていますが、当初予定していた売上げに対しては数十%落ちざるを得ないと思っております。また、こういう状況はこの先も暫く続くと思っています。

新型コロナウィルス禍の終息後に始めたい活動はありますか?

現在、ペインティングスクールやアウトレットのセールも再開に向けて調整しております。 また、このような状況下でお客様が今までどおりの外出ができない分、ネットでの販売が増加する傾向にありました。今後は色々な面で生活様式も変わってくると思われることから、ネットショッピング等の強化も図っていかなければいけません。今までは食器、インテリアに特化してやってきましたが、今後は大倉陶園にしかできない新たな商品開発も進めると同時に、新規事業・事業の改善も進めたいと思っています。

昨年100周年を迎え色々な場所で色々な記念の催しを行う中で、お客様の弊社に対する認識が「知る人ぞ知る大倉陶園」であることも感じました。今後もより多くの人に知っていただく活動を積極的にしていきたいと考えています。

また、実際に大倉陶園の製品をお使いいただいている方々の声を拾い、メーカー側からだけの目線ではなく、ユーザー側から目線でも情報発信することも認識し、共感していただける方を増やしていきたいと考えています。

工場内を見学させていただきました。

―さくらプラザ(戸塚)に求めるものはなんでしょうか?

毎年戸塚区役所で開催される『戸塚ものづくり自慢展』でお客様とお話しさせていただくと、「近くまで行ったことはあるけど知らなかった」といったようなお声を頂戴することがあります。やはり地元の方々には、もっと大倉陶園を知っていただきたいなと思いますね。

昔は工場見学で工場の製作過程を見せることは“とんでもない”という風潮もありました。しかし、今では「ここまで手をかけて作っている製品です」、「ここまでこだわりを持っている会社なのです」ということもぜひ知っていただきたいと考え、工場見学を実施しております。(製造工程上 お見せできない場所もございますが)

さくらプラザさんには、多くの戸塚の皆様に大倉陶園を知っていただくためにも、こちらからもアピールできる機会をより多く創出していただき、お声がけいただければと思っています。 そして、より幅広い年齢層の方々に、戸塚の街に興味を持っていただけると良いですね。 特に、地元を知る機会の少ない若い人や子どもたちに、自慢できる色々な街の情報を伝えていっていただきたいですね。戸塚は歴史のある街で、調べると面白い街ですから。

(取材・文勝間田 努

取材日:2020年6月

戸塚区民文化センター さくらプラザ