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地域のイマ、とコレカラ…『第三十二回 コンセール・アミティエ代表 吉府 充希子さん』

新型コロナウイルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第32回目は、さくらプラザと「地域連携協定」を結び、共催公演「音楽サロン plus」を定期開催しているコンセール・アミティエ代表 吉府 充希子さんです。また、「音楽サロン plus」第50回特別公演のスペシャルゲストとして、戸塚在住のピアニスト 横山 美里さん、今をときめくヴァイオリニスト 高木 凜々子さんも登場! コロナ禍でのそれぞれの想いを伺いました。

 

※高木 凜々子様のお名前の漢字につきまして、【高】の文字は本来は【はしごたか】ですが、システムの都合上【高】を使用しております。ご理解いただきますようお願いいたします。

 

横山 美里さん・吉府 充希子さん・高木 凜々子さん 集合写真●左から 横山 美里さん・吉府 充希子さん・高木 凜々子さん
 
 

―コンセール・アミティエ様の活動についてお聞かせください。

吉府 充希子(以下、吉府):2013年9月より、自主企画「歌声サロン(現・音楽サロン)」を主に開催しています。過去に何度かリニューアルしていますが、当初は「歌声サロン&ハーモニー体操」というタイトルでした。スタートして1年程経った時にさくらプラザの初代館長より、「『地域連携協定』を結び、一緒に戸塚の文化を盛り上げていきませんか?」というお話をいただきました。 そこからはさくらプラザの共催公演として、会場の確保等を協力いただいています。

 

あらゆる世代がひとつの空間で交流できるような、音楽を取り入れたイベントを作りたい≠ニ考えたことが開催のきっかけです。わたしたちの幼少期は、子どもからお年寄りまでみんなで歌えるような童謡唱歌がありましたが、わたしの娘たちはかつての世代なら当然知っているはずの童謡を知らないんです。それがとても寂しかった。戸塚に住む周りの方を見ても核家族が多く、同じような状況で……。そのような理由で、童謡唱歌に親しむことに軸をおいた企画をスタートしました。その時々の社会の状況や参加者の声・意見を拾いながら変化はしてきましたが、軸はぶれないようにしています。2019年9月より2回公演に増やし、約120名を安定して集客できるようになってきたとたん、コロナ禍に入ってしまいました。

―新型コロナウイルスの影響で、活動にどのような変化がありましたか?

吉府:2020年1月を最後に、隔月で年6回開催してきた音楽サロンシリーズを一旦すべて休止せざるを得ませんでした。延期や様子を見ながら進めている主催者も多かったのですが、わたしは早々に決断しました。探り探り開催するよりも、1年経てば絶対に何か変わるはずだからと思ったんですよね。その間、LINE公式アカウントを新しく開設し、童謡を一緒に歌いましょう≠ニいう動画を毎週火曜日に配信しています。自分で撮影や編集ができるようになったことはプラスになりました。

 

コロナ禍当初の世の中は、とにかく歌うこと≠恐れていました。そんな中でも、長年参加してくださっている方たちから「吉府さんに会いたい。歌えなくてもいいから、皆さんと時間を共有したい。」という声をいただくようになり、どうしたらコンサートができるかを探るために、2020年10月、さくらプラザのリハーサル室で「童謡コンサート」を開催しました。参加者全員の検温や消毒をするとどのくらい時間がかかるのか、といった運営面での流れがつかめ、「これならできるかもしれない。」と考えました。ただ、中止になった2020年3月の第40回公演のチケットが手元にある方は約100名。当時のリハーサル室は出演者とスタッフを含めて30名が上限だったため、入りきらない!そのため、復活公演は2021年3月にさくらプラザ・ホールで開催しました。

 

それ以降はリハーサル室に戻りましたが、現在でも参加者は歌わない会にしています。前半はわたしが歌う童謡唱歌を聴いて心の中で歌ってくださいという内容で、後半はゲストによる器楽の演奏を聴いていただいています。音楽の楽しみ方は歌うことだけじゃない、その他にもいろいろあることを皆さんに伝えたいと思っています。もともと「音楽サロン」は、上手く歌うための会ではありません。自分のスタイルで音楽に親しんで欲しい。コロナ禍でも、聴くことで音楽は楽しめるということをわかっていただきたいですね。

―2023年3月28日は第50回記念ということで、ホール特別公演を開催されますね。ゲスト出演される横山 美里さん・高木 凜々子さんをお呼びした理由は何でしょうか?

吉府:特別公演ということで、よりスペシャルなゲストをお呼びしました。高木さんのお父様は京都市立芸術大学(音楽学部)の先輩なんですが、小規模な大学のため専攻や学年が違っても繋がりが密接だったんです。そのご縁で娘さんである高木さんのご活躍を知り、一方的に親しみを感じていました。そこでまずはお父様に打診をしてみたところ、「ピアニストはどなたですか?」と聞かれ、「読売日本交響楽団コンサートマスターの小森谷 巧さん(ヴァイオリン)やNHK交響楽団首席奏者の藤森 亮一さん(チェロ)とトリオを結成されている横山 美里さんです!」とお伝えしました。実はこの時はまだご本人への依頼前だったのですが、ここはピアニストもスペシャルな方じゃないと!と思いまして……(笑)。

 

横山さんは戸塚在住で、私の娘たちのピアノの先生でした。レッスンを卒業してからはしばらく疎遠になっていましたが、もう20年くらいのお付き合いですね。コロナ禍になって開催したわたしのコンサートを聴きに来てくださったことをきっかけに、また密なお付き合いが復活しました。

―吉府さんから見た、演奏者としてのおふたりの魅力をお聞かせください。

吉府:まず横山さんはスケールが大きい演奏をされるので、聴いていてとても気持ちが良いです。10本の指がまるで違う生き物なんじゃないかと思うくらい、それぞれの指が違う音色を弾いているようにさえ感じます。2022年4月にも共演しましたが、ソプラノであるわたしにただ合わせるのではなく、歌とピアノのアンサンブルとして捉えてくれたこと、対等に一緒に音楽を作っていけたことがとても勉強になりました。

 

●2022年4月開催「Le Billet Doux 恋文 2e」より

 

 

次に高木さんは、ビジュアルも可愛いらしいですが、それ以上に技術的、音楽的にとても優れたヴァイオリニストです。先日リサイタルに伺ったのですが、高木さんご自身が歌っているような印象で……。弦楽器は、馬の尻尾でできた弓で弦を擦り音を鳴らす楽器ですが、まるで人間の声のように聴こえてきたんです。そのような演奏に感動したので、「音楽サロン」チラシ掲載のキャッチコピーを春風のように歌うヴァイオリニスト≠ニしました。

―演奏会が楽しみですね。それでは横山さんと高木さんにお伺いします。新型コロナウイルスの影響で活動に変化はありましたか?

横山 美里(以下、横山):あまり公演が中止にならず、意外と影響はなかったんです。客席数は減りましたが細々と演奏家活動は継続できていました。動画配信もやってはみましたが、いつもコンサートにいらしてくれるお客様からは「やっぱりライブがいい。」と言われましたね。お客様とその空間を共有して一度しかないと思って演奏するので、配信とはやはり違ってくるんでしょうね。これからもライブに足を運んでいただけるような演奏活動をしていきたいです。

 

高木 凜々子(以下、高木):わたしは4か月間1本もコンサートがないという状況でした。でもそのおかげでYouTube用に収録をし、SNSに力を入れたいと思うきっかけにもなったので、自分の中ではポジティブに捉えています。2020年 8月には初めてのCD「凜々子ブリランテ」もリリースしました。演奏家としてこれからどう生き残っていくか、人としてどう生きていくかということを学べた期間でもありました。

YouTubeについては、以前は単に公演を収録したものを公開していましたが、コロナをきっかけに1か月に1回収録日を設けて、一気に12曲程収録するようにしています。コンサートに来られないお客様のために届けたいと思ったことがきっかけですが、身近に感じていただけるようなヴァイオリニストになれてきたのではと感じています。

ただ、コロナの影響で公演がなくなってしまったので、いつか海外も含めて様々な場所で演奏したいです。会場でお客さんの反応を見て、その時に自分がどのように感じるのかが今から楽しみですね。

 

―続いて、さくらプラザ等の文化施設や、芸術・文化に期待することをお聞かせください。

吉府:戸塚は多くの音楽家が住んでいますが、意外とまださくらプラザで演奏されていないと感じます。今後はさらにそういった方たちを紹介できる場になると嬉しいですね。地元にこんな演奏家がいるということを知れば、地元愛に繋がるのではと思います。街の再発見にもなりますしね。

 

横山:芸術全般そうですが、今あるものを楽しむためにはそれを後継していく若い人たちがいなければ続かないですよね。例えば演奏家を目指している若い方が、演奏会を開くということは結構大変なんです。ホール代を払い、チラシを作り、集客をし……。なかなか本人たちだけでは実現が難しいので、演奏家たちはただ一生懸命練習して当日を迎えればいいような小さいコンサートを、こういった区民文化センター等で企画していただけると嬉しいですね。若い方たちは演奏の場が多いほど上手になりますので……。

 

高木:わたしの生徒さんもコンクールくらいしか披露の場がないと困っていました。若手演奏家を応援するような企画を継続していただけると、街の振興にも繋がると感じます。

―最後に、戸塚の皆さんへのメッセージをお願いいたします。

高木:3月ということで、桜の季節にぴったりな明るい曲だけではなく、新春という新たな気持ちになれるような曲も選びました。ぜひ生演奏の良さを感じていただきたいと思っています。

 

横山:とてもバラエティに富んだプログラムですので、楽しんでいただけると思います。とにかく足を運んでいただけますと嬉しいです。

 

吉府:戸塚の方でもまださくらプラザ・ホールに来たことがない人が多いようです。せっかく地元にこんな良いホールがあるので、ぜひこの機会にホールで聴く≠ニいう経験をしてみてください。ちょうど春休み期間ですし、学生券(5歳以上高校生以下)もありますので、ヴァイオリンを弾いている方はぜひいらしてください!目標や憧れとなるような良い演奏を聴いていただけたら嬉しいです。

音楽サロン2023年3月28日ホール公演チラシ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンセール・アミティエ

第50回 音楽サロン plus 〜心で聴き、心で歌う〜 50回記念Special

2023年3月28日(火)14時開演

 

※掲載内容は2022年10月のインタビュー時のものです。

(取材・文:桑田 春花)

戸塚区民文化センター さくらプラザ