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地域のイマ、とコレカラ…『第二十五回 NPO法人アクションポート横浜 代表理事 高城芳之さん』

新型コロナウイルスによって戸塚の人々のイマがどのように変わったか、コレカラどうなっていくかインタビューを通じて見つめます。第25回目はNPO法人アクションポート横浜の代表理事である高城芳之さんにお話を伺いました。高城さんはNPOでボランティアやインターンシップを志望する学生を団体につなぐコーディネートを行っています。これまでの歩みや戸塚との関わり、コロナ禍による活動や学生たちの生活の変化などをご覧ください。 

 

―まずは高城さんと戸塚との関わりについて教えてください。

 高城 芳之(以下、略):実は僕、明治学院大学の卒業生なんです。それまでは戸塚と縁があったわけではなく、大学も“横浜”キャンパスと聞いたけど「あれっ?横浜のイメージとは違うな……」という感覚でした(笑)。今では、戸塚は歴史的な意味でもすごい地域だなと感じていますし、舞岡公園やドリームハイツなど、多くの人が横浜とは想像しにくい場所も、僕にとっては“横浜”だと思えるようになったことは面白いことだと思います。

 戸塚に関わることになったきっかけは『戸塚まつり』という大学祭の実行委員になったことでした。『戸塚まつり』は大学生が企画を立ててはいますが、地域のお祭りという側面もあります。ある時、それならもっと色々な人に関わってもらいたいなと思っていたところ、戸塚中学校の特別支援学級の子どもたちと学祭で使う休憩所の椅子などを作ることになったんです。そこで子どもたちとも仲良くなって学祭以降も月一くらいのペースで遊びに行っていました。

 この活動をボランティアサークルとしてサークル化したら、いつからか社会福祉協議会さん(以下、社協)などからも依頼を受けるようになったんですが、すごい数のオファーが来てしまって……(笑)。毎月、何度も行くのは難しかったので社協とケアプラザにお願いをして、学生と地域の人たちでボランティアを“やりたい”人同士のマッチング会をする場をセッティングしました。最初は上手くいきそうだったんですが、意外と上手くいかなくて……。人と人を会わせても、地域の人は「受付をやってほしい」などと要望が具体的なことに対して、学生の方は「とにかく何かやりたい」と漠然としていることが多く、「行ったけど何をやっていいのかわからないからお手伝いだけして帰ってきてしまった」というようなミスマッチが起きていたんですね。そういったことから、ボランティアにもコーディネートが大事だと感じました。

 その後、横浜市市民活動支援センター(※1)の戸塚プラザで学生アルバイトとして関わるようになってコーディネートが仕事になると知りました。そのまま、市民活動支援センターに新卒で就職しまして、それが今の仕事の始まりとなっています。

 

(※1)2019年まで桜木町に設置されていた市民活動拠点。現在は、横浜市役所新庁舎に設置されている「横浜市市民協働推進センター」が市民活動の拠点となっている。

 

  

●高城さんがボランティアサークルを立ち上げた学生当時の写真

アクションポート横浜はどのようにして設立されたのですか?

市民活動支援センターの運営を横浜市が募集したことを機会に、当時、センターを運営していた横浜市市民活動支援センター運営委員会の有志を募って設立したのがアクションポート横浜です。当時は大学の教授やNPOの代表などが代表理事を務めており、僕は2018年にバトンを次いで2代目の代表理事です。当時はドコモさんと協力して「横浜コミュニティサイクルbaybike」の運営に携わるなど、さまざまな活動をしながら若者と地域を繋ぐことをやっていました。戸塚とも関係を続けていて、コミュニティカフェの立ち上げに関わったり、センターの運営にも関わったりしています。ですので、戸塚のことは大体知っているんです(笑)。

現在は特に、大学生がNPOでインターンシップをする仕組みを作っており、横浜の近隣の11の大学に単位化していただいています。ボランティアをやりたいけれどきっかけがないという学生たちは統計的に全体の5割くらいはいまして、そういった学生の受け皿になっています。また、NPOも高齢化や担い手が増えないなど色々な課題を抱えていますので、そういった学生とNPOとのマッチングをしています。これまで、実際にNPOに就職した学生、就職しなくても企業や行政で働きながらNPOの会員になった学生もいますので、NPOを支えていく人材育成に繋がっていると思っています。そういった学生と地域が関わる仕組みを横浜で作り、全国に広げています。全国でも学生とNPOのネットワークを作って学生が単なる労働力にされないようにしたり、団体側も学生を活用して社会課題解決や価値創造に繋がったりするようにしていきたいです。

 

●アクションポート横浜のインターンシップに関する取組ついては、「NPOインターンシップ ツナがるカンケイ」(http://intern.yokohama/)公式ホームページにて詳しくご覧いただけます。

―コロナ禍での活動はいかかがでしょうか?

 「横浜サンタプロジェクト(http://santa.yokohama/)」という、横浜市内の企業、団体のメンバー、学生などが800人くらい集まり、サンタクロースの装いで社会貢献活動を行う、アクションポート横浜の中でも売りの事業があったのですが、これは密になってしまうこともあり例年のような開催ができていません。

 最近取り組んだこととしてはヤマト運輸労働組合さん(以下、ヤマト運輸)と地域の福祉施設との連携事業があります。福祉施設からは「学生がボランティアに来られなくなってしまった」という相談が、ヤマト運輸さんからも「社員がボランティア活動に参加できない」というお話をお聞きしたので、そこを繋げて何かできないかを考え、ヤマト運輸さんの力を活かしながら施設の子どもたちと学生たちの繋がりをオンラインで作ることを行いました。わかりやすい例で言うと、サンタクロースが画面上で「コロナ禍で忙しすぎてクリスマスツリーの飾りつけができなかったから子どもたち皆で作ってくれ!」と施設の子どもたちに指令を出して、子どもたちには自宅でツリーの飾りを作ってもらうんです。作ったものはヤマト運輸さんの力を借りて一か所に運送し、今度は学生たちに、その飾りをクリスマスツリーに飾り付けてもらいました。オンラインで点灯式を開催した後は、横浜ラポールにて一か月間展示を行い、いつでも写真を撮りに来られるようにしました。ヤマト運輸さんには全国の社員さんがオンラインで、学生と毎月のように会議をしてプロジェクトを進めていただきました。若手の社員が学生や施設の方と共に活動することで、普段はできない出会いや体験ができ、コロナ禍でも貴重な時間だったと参加者からもコメントをいただいています。

 このように、コロナ禍以降もオンラインで工夫しながら活動していました。NPOの学生インターンシップは意地でも中止させないと思っていたので、オンラインを活用して継続開催できています。実習やサークル活動もできなくなってしまった大学もあるので、その反動で例年だと60人位の申込のところ、2021年度は申込だけで160人位集まったんです。海外留学もできなくなってしまっているので、そういった機会を求めている学生たちがプログラムに参加したいと言ってくれていますね。

 

 

●サンタプロジェクト(上)と、ヤマト運輸労働組合との連携事業(下)の参加者たち

―学生さんたちの活動へのモチベーションはどういったところにあるのでしょうか?

 人それぞれですが、そもそも今の一人暮らしの学生たちは特に繋がりがなくなっています。僕らが学生だった頃は大教室に一同に集まるので、同じ学部学科で繋がりができるきっかけがあったのですが、今の学生たちは全部オンラインなのでそれすら無くなっています。同じバスに乗っていても、同じ学部なのか学科なのかもわからないくらい繋がりがないので、まずは繋がりが欲しいという学生が一定数います。あとは、サークルや普段の活動ができなくなってしまった学生が余った力を何かに発散させたいとか、コロナ禍で何も経験がない中でも就活や勉強は進んでいくので、そういう中での焦りだとかがモチベーションになっていると思います。

 “繋がり”ということで言えば、サークル活動も人が集まらずに運営危機になるサークルが増えています。サークルって入ってみないと活動や空気がわからない場合がありますよね。今までは「たまたま声をかけられたから」という理由で入った学生がいたのに、「たまたま入る」ということがコロナ禍では起きにくいので、サークルはどんどん廃れていってしまいます。特に、ボランティア系とか地域活動系といったサークルは今どんどん下火になっているようです。二十歳になったけど飲み会に参加したことがない学生もいますね。オンライン飲み会で集まろうと呼びかけても、そもそも飲み会を知らないから乾杯もしたことがないということがあるようです。偶然の出会いがないので僕らの時代のような恋愛も難しくなりますし、友達も出会うべくして出会ったという人以外にはいない。僕からすると不思議な感じですね。

ー最後に、さくらプラザや文化芸術セクターに期待されることを教えてください。

 区民活動センターでもよく話しますが、若い人は特にこの2,3年で“場所”の価値が一気に変わりましたよね。「ちょっと集まろうぜ」というのもオンラインの方が早いですし……。文化施設に限らずカフェなどもそうですが、これからは特にハードよりもソフト面を考えていかないといけないです。

 文化施設というと「目的がないと行かない」という感覚があります。ふらっと行く場所ではないという感覚が強いので、そこを何とかできると良いなと思います。例えば、アクションポート横浜が行うインターンシップの報告会をやらせてもらうなど、そういう場所としても利用できると良いかもしれないです。文化芸術ではないかもしれませんが、そうすることで「こういう場所があるんだ!」と知ってもらえるので……。学生団体に貸し出す日を作るのも、面白いかもしれないですね。例えば、かながわ県民センター(※2)が横浜にあるのですが、毎年2月になると学生の利用が増えるんですよ。その理由は学生が入試で校舎に入れず、サークルの活動の場所がなくなるからなんです。そういった期間にあてて、さくらプラザを利用できるようにすると、学生団体はきっと利用すると思います。

 文化芸術分野ですと、STスポット横浜(※3)もインターンシップの受け入れ先になっていて、人気があるんですよ。文化芸術の分野で働きたいとまではいかなくても、関わりたいと思っている学生は一定数いると思います。これはSTスポットさんとも話しているのですが、文化芸術に興味のある学生が“学生向け”にアイデアを考えることが一番良い経験になると思うんです。ですので、文化施設でも学生たち自身で“学生向け”にポップを作ってもらったり、学生たちがよく見るメディアに“学生向け”の情報を流してもらったり、そういったことを仕掛けていけば、学生たちが文化施設に集まってもらえるのではないでしょうか。

 

(※2)神奈川区鶴谷町に建つ施設。神奈川県民の活動の場や情報の提供、相談などの業務を行っている。

(※3)西区北幸に建つ劇場施設。劇場の運営以外にも、教育・地域・福祉といった分野とアートの連携を促進している。さくらプラザとは地域連携協定を交わしている。

 

※掲載内容は2022年3月のインタビュー時のものです。

(取材・文:小野 良、写真:桑田 春花)

戸塚区民文化センター さくらプラザ